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夜の影

第12章 愚か者

【翔side】

手掛かりになるようなものが残っていれば。

母だってあんなに苦労しなかったんだ。



「借 金 返 済 の催促、ってまだしつこく電話来てます?」

「……」



俺はまた馬鹿みたいに頭を振る。

家の鍵を取り上げられて、着の身着のままで追い出されてから何日たったのか…。

てっきり引き続いて催促が来ているものと思って、スマホでも通信を行っていなかったけど、違うのか?



「わからないんですね…?

こう言っては失礼ですが…

精神的に追い詰めて自分たちから遠ざけるのが目的だった可能性が高いです

いろいろ探られたくなかったんでしょう

申し訳ないけど、翔さんも所詮は学生だし
お母様も亡くなられて、頼りになる大人もいない

それらしく体裁を整えてハッタリをかます
女子供相手に連中が良く使う手です」



そんな…。



じゃぁ、泣き寝入りしろってことか?



そもそも「連中」って…。



父は一体、何に巻き込まれていた?





俺は呆然と二宮君を見た。

彼の薄茶色の瞳が、何か、痛ましいものを見るような、憐れむような視線で、俺を見ていた。









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