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夜の影

第12章 愚か者

【翔side】

「お前といい、アイツといい
人を追い詰めて操作するのが上手なことだな」



サトシの硬い声が聞こえてきた。

何の話をしてるんだろう、と思ったけど。

躰が動かないし、目も開かないから、そのまま聴く。



「追い詰めてなんか…
翔さんには知る権利があるし
選ぶなら早い方が良いと思っただけ」



二宮君の声はどこか弱々しく、弁解しているようにも聞こえる。



「追い詰められたから過呼吸を起こしてたんだろ
本来、新人はバッチの預かりだ
俺の頭越しにする話じゃねぇだろうが

ここに来る奴はそもそもギリギリなんだ

行く場所が無くて
切羽詰って

他にどうしようもないからここに来た

一度身を沈めたら戻れないかもしれないのに

それを自分たちの都合で勝手に動かそうとする

平気で

俺達の決心なんかお構いなしじゃねぇか

普段俺達にはルールを守れ、ってうるさいくせに
自分たちの側は何をしてもいいと思ってる

管理者だから?

悪いが、俺はそういうやり方は好かない」



「…………」



「俺をここに引き留めるためには新人が必要で
丁度良くショウが居たから使った

自分たちの目的を達成するには
俺に仕事をさせいんだろ?

その為に今度はショウを外に出そうとした
それがお前が描いた絵なんだ」



二宮君が息をのむ気配がするけど。

何の話なのか俺にはわからなかった。

ただサトシが酷く怒っているような気がした。

何でそんなに怒ってるんだろ…。



「俺は今まで
お前は他人の気持ちが分かり過ぎるんだ
って思って来たけど…

こんなことが平気で出来るんだから
逆に全く理解できないのかもな

計算通りには行かないってことさ
かわいそうに…」



かわいそうに、と言いながら、サトシの手が俺の頬に触れた感触があった。







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