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夜の影

第13章 サヨナラ

【翔side】

「どした?
喋り方、忘れちゃった?」

サトシの言い方が優しいから。
うん、て頷いた。

サトシは目を細めて笑ってる。



「いいさ、どっちでも
好きなようにしな」



だって、なんか。

喋ったら遠くなりそうな気がするし。



「あと俺ぇ、仕事が入ったから明日から居ない」



えっ!?



ビックリしてお椀を落としそうになって、慌ててテーブルに置いた。



「何?ショウ君は一人が寂しいのかな?
俺が居ないとダメなの?
そーかぁ、
ショウはそーんなに俺が好きなんだぁ
何と言っても 初 め て の オ ト コ だもんなぁ?」



サトシはわざとからかう口調で、俺に言う。

俺の反応を見て面白がってるんだ。

楽しそうに目がクリクリしてる。

恥ずかしいから、目の前にあった袋入りの味海苔をサトシにぶつけてやった。



ばーか。

って口の形だけ作って、声を出さずに言ってやる。



「照れんなよ
そういうもんだよ?
初めてってのは?
可愛かったよ、ショウ君」



うっせ、ばーか!

ばーか。
ばーか。



箸を投げてやったら、手で顔をかばいながら、サトシは大ウケしてる。

笑い過ぎて腹を抱えて、顔をクシャクシャにしてた。



サトシのばーか。



俺ははぐらかされたことも分からずに、ひたすら照れていた。

サトシの「仕事」が何を意味するのか、考えもせずに。









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