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夜の影

第14章 Akira

【某国某氏】

断れない筋からの頼みで預かってはいるが、正直なところニノミヤには失望している。

同じ日本人なのに、ヒガシヤマやアキラ達とは大変な違いだ。

あれで王家に連なる家系だというが、品の無さには驚きを通り越して呆れてしまう。



「ムシュ、怒ったの…?」



アキラが申し訳ないような顔で、上目遣いに私を見た。

何とも可愛らしい。



「安心しなさい
お前を怒っているのではないよ
あの男には散々イライラさせられている
連れ歩くつもりはない

全く、何度も使っているホテルなのに
今回に限って予約にミスがあるとは
せっかくの大統領スイートが台無しだ

あの男には部屋から出ないように念を押しておく」



2ベッドルームのスイートだったから、まだ良かったが、何故私があの男と同室で過ごさねばならないのか。

空いているシングルならいくらでもあるだろうに、あの男はシングルなど使用できないと頑として首を縦に振らなかった。

一応は客として預かっているから、形だけは丁重にしなくてはならない。

忌々しいことだ。



「ムシュー、僕、あの方、何だか怖い…」

「何かされたのかね?」



ギョッとして問いかけると、アキラは慌てたように首を振った。



「いいえ…気のせいだと思うけど…
ごめんなさい、お連れの方を悪く言って
ムシュ、なるべく早く帰って来て…?」



情 事 の 疲れを滲ませて、小さく笑って見せるのがなんとも健気だ。

このアキラだったら、国に引き取ってもいいかもしれない。



「私の可愛い真珠
なるべく早く戻ろう

上のバーに居るから何かあったらすぐに連絡しなさい
部屋の電話を使うといい」



言って口付けてやり、ベッドルームを後にした。






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