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愛が、はじまるとき 「改訂版」

第1章 愛が、はじまるとき 「改訂版」

         10

 わたしは、満さんの胸に顔をうずめて、しくしく泣きだしていた。
 悲しかったのではない。
 満さんの優しさが、嬉しかったのだ。
 その日から、わたしは、彼のことは、忘れた。
 そのかわり、わたしのなかに、満さんが、住みだした。
 なにより、あの晩の、優しさが、嬉しかった。
 だから、思わず、泣いてしまったのだ。
 そして、満さんのことを思うと、胸が熱くなる。
 あの優しさを、もう一度、味わいたいなあと、なにかにつけて思っているわたしがいる。
 わたしは、優しさに、飢えていたんだと思う。
 そして、いままでのわたしなら、考えられないが、自分から電話して、
 「こんど、
  泊まりにいっていいですか?」
 と、言ってしまったのだ。
 満さんは、
 「いいですよ。
  こんどは、
  ゆっくり、
  私といることを、
  楽しんでください」
 と、言ってくれた。
 わたしは、満さんなら、優しいセックスをしてくれるだろうなと思い、それが、泊まりたいと言う動機になったのだけど、それを認めるのは、自分で自分が恥ずかしかった。

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