テキストサイズ

明日への扉 ~~ 伝えたい気持ち

第5章 バイト先・其の弍 ”フードエキスプレス”にて


「ホラ、悠里はカウンター」

「あ ―― 皇紀さん……叱ら、ないんですか?」


 皇紀さんはフッとほほ笑み、


「叱ってどうすんの? 少しボーっとしてたのは自覚
 あるよね? それで、俺に申し送りし損ねたのも
 自分のミスだと分かってる」

「―― はい」

「じゃあ、後は自分で反省するだけだ。同じミスを
 繰り返さないようにね。それとも ―― 怒られた
 方が気が楽だって言うなら、思いっきり怒って
 あげるけどー?」


 皇紀さんの言葉はある意味、衝撃だった。

 叱らない代わりに、自分のやった間違いを
 良く考えろ、と言われ。
 自分の中に”油断と甘え”があった事に
 気付かされた。
 満席の状態が長く続くなんてそう珍しい事じゃ
 ないし。
 妹の突然の来店に気を取られていたなんて、
 言い訳にもならないのに……。


 柊二は”この分では話しどころじゃないな”と
 コーヒーを飲み干したところで立ち上がり、
 会計を済ませて店から出た。
 
 本当は今日こそ悠里をアフターデートに誘おうと
 考えていたのだが。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ