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明日への扉 ~~ 伝えたい気持ち

第3章 翌々日 ――



 食事を終えた彼は再びきちんと手を合わせ
 『ごちそうさまでした』と丁寧な挨拶をした。


 それから引き寄せた鞄から名刺入れを取り出し、
 ボールペンで何かを書き加えて、
 私に名刺を差し出した。


「今度ぜひ、お礼をさせて欲しい」


 私は箸を置いて首を横に振る。
 差し出された名刺も受け取らなかった。


「お気になさらないで下さい。
 見捨てておけなかっただけなんで」

「でもキミが助けてくれなかったら、
 俺は校門の所で凍死していたかもしれないんだ。
 命の恩人だよ」

「命の恩人だなんて ―― 大げさな……
 ホント、お気になさらないで下さい」


 私がいっくら断り続けても
 彼はなかなか折れてくれなくて、
 しつこく名刺を押し付けてきた。

 結局、先に折れたのは私の方だった。
 やむを得ず名刺だけ受け取る事にした。

 受け取ったその名刺は、
 何となく見覚えのあるデザインのものだった。


「……え?」


 右上に印字された金色のロゴマーク。

 それは……私が働いている清掃会社が清掃の

 年間契約をしている会社のロゴマークとまったく

 同じだ。

 ㈱ コスモグループ ――
  

 ロゴマークの横に書かれている社名も

 私が知ってる会社と同じだった


 目覚めた時に聞こえてきた、

 彼が電話で話していた会話から想像するに

 彼はかなり上層部に位置する管理職だと思われる

 ……おそるおそる彼の役職と名前を確かめた。

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