たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第1章 杉並実果留
*
「はぁードキドキしたぁー! ラストの大どんでん返しには、ホンットに度肝抜かれたって感じー!」
私はかなり興奮しながら、夕崎君と映画館から出た。
「ですよね。自分もまだドキドキしてます」
「私、夕崎君に言われるまでこんな映画があったの知らなかった。正直、洋画はあんまり見ないから」
「自分も洋画をよく見るわけではないんですよ。この映画の主役をしていた俳優が好きでして。アクションだけでなく、ラブストーリーもコメディーもこなすから、見ていてあきないんですよね」
「へぇー、そうなんだぁー……」
映画のパンフレットを眺めた。
すんごいダンディーな人。
……ぷぷっ! この俳優さんと比べちゃうと、武が超子供に思えるー!
「……杉並さん、そんなに面白かったんですね」
「え?」
何が? と顔に出すと――
「笑いが漏れてましたよ。気づきませんでしたか?」
私を微笑ましそうに見つめる夕崎君に、良心がズキンと痛んだ。
っ、バカ私っ!
こんな純粋に、私を好きだと想ってくれている夕崎君といるのに、つい武のことをっ……。
「あっ…………いやだなぁー、私ったらぁー。キモいよねぇ?」
「いいえ。キモいことはないですよ」
「あーっ。夕崎君、私のが移ったー。『キモい』って!」
「えっ? ……あは。つい、つられちゃったみたいですねー」
「あーあ。夕崎君、どんどんしゃべり方が雑になっていくよー。私のせいで」
「あははっ。杉並さんのしゃべり方なら大歓迎ですよ」
……ごめんね、夕崎君。
もう考えないから。
夕崎君といる時ぐらいは、武のことは忘れるから。
武のことは……
…………
なんて……無理だよ。
武のことを忘れて過ごすなんてこと、私にはどうしても出来ないよ。