たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第1章 杉並実果留
「……あの、夕崎君……」
私はふと立ち止まり、少し先に進んだ夕崎君に声をかけた。
「……どうしました?」
「あの……私……」
まだ二週間だし、ここで終わりにすれば、夕崎君もそんなにダメージを受けないよね?
これ以上、夕崎君に気を持たせてちゃいけない。私だって、武が好きなんだから。やっぱりこんなの良くない。
でも……楽しそうにする夕崎君のことを思うと、決心が鈍る。
どうしよ……。
どうする?
言う?
言わない?
気ばかり焦ってきて、正しい判断がつかなくなってきちゃって……結局私は――
「あ……私、さ……そこの本屋で、漫画が買いたいんだけど……寄ってっても、いい?」
苦し紛れに、近くの本屋を指差しながら、夕崎君に遠慮がちに訊いた。
「あ……なんだ、そういうことでしたか。あまりに深刻そうな顔をしていましたから、てっきり大事な用でも思い出したのかと……」
「っ……あ、アハハッ! ごめんごめんっ! 漫画ごときで夕崎君を止めていいのか迷っちゃってー!」
と、わざとテンションを上げて笑い飛ばす。
「そんな、いいに決まってるじゃないですか。自分に遠慮なんてしないで下さい」
夕崎君、優しすぎる……。
「あ……ありがとー。じゃあ、いいかな?」
「はい」
はぁあ……結局何も言えなかった……。
まぁ、いいかぁ……。まだ無理して別れようとしなくても。
どうせ武は、私のこと何とも思ってないだろうし、私が気持ちさえ隠していれば、このままつき合っていても問題ないよね?
だからまだ……今はこのままで……。
私は、何の漫画を買おうかと急いで考えながら、夕崎君と本屋へと入っていった。