たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第4章 佐倉武
「ん? 何だ?」
俺はまとわり付いた物を、そのまま摘まんでよく見た。
なんだ? やたらと長い糸だな……黒に近い茶色で。
いや……違う。糸じゃねぇ。
これ――髪の毛か!?
もう一度よく見直した。
……間違いない。髪の毛だ。
でも俺のじゃない。長すぎるし、髪の色も俺の方が茶色いし。
おふくろでもない。おふくろもショートだ。
実果留母か? 髪の色が似てる。にしちゃあ、毛質がストレート過ぎる。実果留母はパーマをかけているから……
ん? ストレート? それって――
「実果留?」
だから、あり得ないって。アイツが来るわけないんだって。俺とケンカしたし、夕崎とデートだし。
そうだ。きっと朝来た時だ。その時に付いたに違いない。
けど……枕に付くのって、あり得ないよな? 実果留は、ただベッドのそばで座っていただけだ。枕に付くなんて、このベッドに寝た時にしかつかないんじゃ……
え? 寝た、時?
さっきまで見ていた夢での出来事が、鮮明に思い出される。
確かに、リアル過ぎ……だったよな?
俺は胸騒ぎをしながら、もう一度枕をよく見た。
すると――
「……これは?」
枕の下に何かあるな。
指で引っ張り出し持ち上げて見てみると、それは――
朝、実果留が髪に結んでいた、花のモチーフが付いたヘアゴムだった。
「えっ……」
これがあることによって、何かしらの現実を突きつけられた俺は、サァーッと血の気が引くのがわかった。
「まっ……マジかよっ!」
俺はヘアゴムを握りしめて、急いで部屋を出て階段を駆け下りた。