たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第5章 杉並実果留・最終話
「だからあの時、佐倉君が家に帰った後『やっぱりつき合うのやめる』とか言われるんじゃないかと思って、覚悟をしてました。
でも……杉並さんは言わなかった。
それどころか『じゃあこれからよろしくね!』って、笑顔で言ってくれて……。
他に好きな人がいるとわかっていても、利用されているともわかっていても……
自分は、ますます杉並さんを好きになってしまいました」
「夕崎……君……」
何で? 何で、そんなことが言えるの?
お願い……私に優しくしないでっ。
じゃないと、私っ……
限界寸前の涙腺を、何とか堪えた。
「自分からも言おうとも思いました。『もう、つき合うのはやめにしませんか?』って。
けど、すみません。それは、結局自分の口からは言えませんでした。
一緒にいるのがあまりに楽しくて、自分は何も知らないふりをしてつき合い続けました。
ですから……ひどいのはお互い様なんですよ、杉並さん?」
「……あっ……」
夕崎君は、パンツのポケットから紺色のハンカチを差し出してくれた。
それで気づいた。
私の目から、堪えきれなかった涙が漏れてしまっていたことに……。
優しくされる資格なんて、今の私には無い。
けど、差し出してくれている優しさを断る資格は……もっと無い。
私は、夕崎君のハンカチをそうっと受け取り、目を拭った。