たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第5章 杉並実果留・最終話
更に夕崎君は、私に口を開く。
「だから……杉並さんのことをひどいと思ったことは、一度もないんですよ」
「え……そんなっ、ウソでしょ!? 夕崎君、優し過ぎるっ! 怒ってよっ! 『なんて女だっ!』って!」
「本当なんです。ただ利用してるだけだったら、自分に対して冷たくすると思うんですよ。なのに杉並さんは、優しいし、楽しそうだしで、ひどい人には思えませんでした」
「そんなことっ……」
私は夕崎君と一緒にいる時でさえも、いつも武のことばかり考えてたのに……。そんな私なんだから、もっと怒ってほしいよ。夕崎君、いくらなんでも私を甘やかし過ぎっ。
せめて何か、私にペナルティー的なことを……
あ。そうだっ。
「夕崎君。お願いがあるんだけど」
あることを思い付くと、夕崎君に体ごと向けて改まった態度をとった。
「……はい。何ですか?」
私は一呼吸してから、意を決して――
「私を……殴って!」
と、思いきって言い放った。
「えぇ!? どうしてですか!?」
「ケジメだよ、ケジメ! そうでもしてもらわなきゃ、私の気が治まらないのっ!」
「そんなこと言われても無理ですよ! 杉並さんを殴るなんてこと、自分には出来ません!」
「大丈夫! 私、親にも殴られたことあるからっ!」
「そういう問題でもないですって! 杉並さんだって、もう十分苦しんだじゃないですか!」
「まだまだ足りない! 私はもっと傷つかなきゃいけないのっ!」
だって、私は昨日……武と……
ダメダメ! 今は鮮明に思い出しちゃ! 顔が赤くなっちゃう!
あんなこと、夕崎君が知ったらもっと傷ついちゃう。
だからせめて……私を思いっきり殴ってほしい!