たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第5章 杉並実果留・最終話
「…………わかりました」
私の熱意が通じたのか、夕崎君は観念したみたいに了承してくれた。
「けど、やっぱり殴ることはどうしても出来ませんので、ほっぺたを力いっぱいつねる……ってのはどうですか?」
「ほっぺたを、つねる?」
「それなら遠慮はしませんよ。ほっぺたが腫れるぐらい、ギュッとつねりますから」
と、夕崎君はつねる仕草をして、笑みを浮かべた。
「……夕崎君……」
「それで……いいですか?」
「……わかった!」
力一杯つねってくれるなら、それでもいいっ。
「本当に、遠慮しないでよ?」
「わかりました。
じゃあ……目をつむって下さい」
「はいっ」
とっくに覚悟を決めていた私は、迷いもなく目をギュッとつむった。
夕崎君の手が、私の頬に触れる。
来るっ……。
顔全体にも力が入る。
けど……なかなか頬に痛みを感じない。
痛みを感じるどころか、何か柔らかいものが触れたのを感じた。
それは、頬にじゃなくて――
え……? 何?
唇に柔らかい感触が……。
そうっと目を開けてみたら、
目から一センチの距離のところに――
メガネを外した夕崎君の顔が。
ウソッ……これ、キスじゃっ……。
された事がそうだと自覚した時には、夕崎君の顔がスッと離れた。