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sweet poison【BL】

第2章 失った恋人との再会

エレベーターに近付くと、立っていた警備員の一人が動いた。

「ご案内いたします」

「よっよろしくお願いします」

不覚にもビクッと震えてしまった。

鍛え上げられた体を警備員の服に包んだ男性の眼は、どこか野性的な感じがした。

獲物を見つければ、すぐに飛び掛りそうな勢いを宿している。

陽一は背中に汗が流れるのを感じた。

しかしエレベーターは静かに早く、目的のフロアに到着した。

最上階というだけあり、目の前のガラスの向こうには東京の町並みが一望できた。

これが天気の良い日だったのならば感動できたかもしれないが、今は昼間なのに曇り空で暗かった。

まるで自分の心境がそのまま天気に表れているようで、陽一は声なくため息をついた。

警備員はフロアの奥の部屋の扉の前で立ち止まった。

扉には銀のプレートが貼られており、『S&M』の文字が刻まれている。

警備員は躊躇いなく扉を開け、陽一に中に入るよう勧めた。

「奥の部屋で担当者がお待ちです」

「あっありがとうございます」

警備員は陽一が部屋に入るのを見届けると、扉を閉めた。

部屋はまず、クリーム色絨毯が眼に映った。

踏むと柔らかな感触がする。

そして部屋の隅には観葉植物、壁には風景画、黒い革のソファーセットに木製のテーブル。

事務所というより、応接室だ。

しかしこの部屋には誰もいない。

だが部屋の奥の方に、少し開いた扉がある。

「こっちかな?」

小さく呟き、陽一は奥の扉を開けた。

するとそこには、窓の方を向いた一人の男性のスーツ姿があった。

「あの…」

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