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sweet poison【BL】

第4章 生き残った者の未来

だから一つの疑惑が浮かんでいた。

両親はもしかして自分が昏睡状態の時に、羽月の父親から金を貰ったのではないか―と。

大金を受け取る代わりに、今後一切関わらないことを、条件に出されたのではないかと思った。

そしてそれは、羽月が生きているからこそできる契約だ。

冷静に考えれば、おかしなところは多かった。

例えば引っ越してきた家。

引っ越しの話は急だったはずなのに、来た時には新築の一戸建ての家があった。

田舎に建て売りの家があるわけもない。

まるで前以て茜一家が引っ越してくることを分かっていて、誰かが建てたようだった。

そして事業についてもそうだった。

花や果物を使うアイディアは陽介が考え出したものだが、工場の建設費用などの大金は一体どこから出たのか、ずっと不思議だった。

いくら陽介と水野が優秀だったとは言え、退職金だけで工場は建たない。

しかし銀行などから借りることなく、工場は引っ越してきた一年後には完成したのだ。

明らかにおかしな資金繰りに、疑いは大きくなっていった。

けれど、確かめることはしなかった。

できなかったと言ってもいい。

別に両親を責めたいわけではなかった。

ここまで追い込んでしまったのは、羽月と自分のせいだと陽一は分かっていたから。

…確かめれば、知りたくない真実を知らされる可能性があったから、陽一はあえて黙っていたのだ。

―そう…、羽月がまだ生きているという可能性を。

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