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sweet poison【BL】

第5章 相対する二人の心

「ボクが眼を覚ましたのは、陽一が運ばれたのとは別の病院だったんだ」

羽月は陽一の耳に囁き続ける。

「そこで父さんから陽一は亡くなったと聞かされてね。じゃあ遺体を見せてって言っても、ダメだと言われて…。明らかに怪しかったから、信じちゃいなかった」

五年前と比べると僅かに低く、そして艶のある声になっていた。

口調は変わらないだけに、それが恐ろしい。

「ある程度回復した後、無理やりアメリカに留学させられてね。経済学を学んで来いって言われて、一年前までアメリカに住んでいたんだ」

陽一を抱き締める手に力を込め、羽月は切なげに顔を歪めた。

「本当は病院にいた時に、何度もキミを探しに行こうとした。けれど父さんの監視役が何度もボクを捕まえて、戻されて…。身動きできなかったんだ。ゴメン…」

「どっどうしてオレの居場所が分かったんだ?」

一年前までアメリカにいたのなら、陽一の引っ越し場所や職場など、知ることはできなかったはずだ。

「ずっと探してはいたんだ。でも父さんの妨害があって、なかなか上手くいかなかった。けれど日本に帰ってきて、留学で学んだことを仕事で活かしたいって父さんに言ってね。今の会社を立ち上げたんだ」

「じゃあこの会社の設立者は…」

「うん、ボク。陽一を探す為だけに作ったんだ」

羽月は真正面から、陽一を見つめた。

いとおしそうに両手で頬を包み込む。

「こういう仕事をしていれば、情報が入りやすいからね。水野さんって言ったっけ? 彼が顔の広い人で助かったよ」

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