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sweet poison【BL】

第5章 相対する二人の心

それはずっと疑問に思っていたことだった。

もうダメだと、あの時はっきり思った。

しかし息を吹き返したのも事実。

「うん。実はあの薬、仮死状態を作る為だったらしいよ」

「仮死状態?」

思わず声が裏返った。

毒薬でなくて安心したが、これまたあまり聞きなれない言葉が出てきた。

「母さんからずっと毒薬だって聞かされていたけどね。本当は生命活動を最低限に抑えるだけの効果しかなかったみたい」

飲んだ直後は呼吸も脈もかなり弱くなる。

それこそ一時は止まるほどに。

しかししばらくすれば体は回復し始め、意識も戻る。

時間が経てば、完全に回復するという薬だったのだ。

その効果を実際に体験した陽一だが、新たな疑問が思い浮かんだ。

「どこでそれを知ったんだ?」

「あの薬の残りを、知り合いに調べさせたら分かったことなんだ。だから陽一が死んでいないと分かった」

「でもお前の母親は毒だって、ずっと思っていたんだよな?」

「いや、そこも怪しいかな? 父さん達の眼を誤魔化す為に用意したのか、あるいは―」

そこまで語り、羽月はくすっと笑った。

「ボクにだけ飲ませて、効果が出た頃に一人でどこかへ逃げようと思って、用意したのかもしれない」

「なっ!」

あまりの言葉に、陽一は眼を丸くした。

しかし羽月の母親にとって、息子さえいなければ、正妻からの嫌がらせを受けずに済んだことは否定できない。

娘であれば後継者問題など無く、陰湿な嫌がらせを受けずに済んだだろう。

ゆえに息子を置いて、一人で逃げようと考えても不思議ではなかった。

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