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sweet poison【BL】

第5章 相対する二人の心

彼女は体も心も、そんなに強くない女性だったのだから…。

「まあ今となっては、知る術はないんだけどね」

羽月は苦笑し、肩を竦めた。

「じゃあ…お前は何で死ななかった?」

陽一の鋭い視線を受け、羽月は無表情へと変わる。

そして黙って左腕にしていた時計を外した。

「うっ…!」

そこで陽一の目に映ったのは、生々しい傷跡。

大きく横一文字に裂かれた肉の色。

「ちゃんと腕は切ったよ? けれどさすがにあの寒い中、一回切っただけじゃ足りなかったみたい」

傷は浅く、けれど血は大量に出ただろう。

しかし羽月は何でもないように、腕をブラブラと振って見せる。

「でもまあ浅くて良かった。陽一一人だけを残しては死ねないからね」

羽月の口から出た死という言葉に、全身の血が急激に冷えていく。

唇を噛み締め、強く羽月を睨み付けた。

「…またオレを殺す気か?」

「う~ん。どうだろうねぇ?」

対して羽月は余裕の笑みを浮かべる。

ここでどんなに抵抗したとしても、かつての空き家の時のように、意味など無いのだろう。

「陽一はボクと一緒に死にたい?」

「イヤだ。オレは死にたくない。生きてお前と一緒にいたかったんだ!」

あの時言えなかった言葉を、声を大にして言った。

羽月はきょとんと眼を丸くしたが、すぐに笑みを浮かべた。

「…陽一のそういうところ、変わっていないね」

そう言って優しく微笑む羽月の方が、変わっていないように思えた。

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