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ヌードモデルと緊急事態

第2章 救命講習と半裸2


救急隊員の模範演技──
「呼び掛けて返事がないのを確かめます」「気道を確保します」
「周囲へ協力要請します。『あなた、救急車!』『あなた、AED!』」
──などなど。

心音を聞くために実際に胸に耳を当てられた。
手首の脈じゃないんだね。

私は意識がないことになっているので、目を閉じたまま、無反応でいなければならない。

「それでは、AEDの使い方です。胸を出す必要があります。相手が女性でも躊躇しないでください」

言うが早いが、ボタンがすべて外された。ブラジャーが露わになる。

目を閉じているが、周囲が息を呑む気配はわかった。

役員のうち何人かは知っていたはずだが、普通の参加者は、たかが公民館の講習会でここまでやるとは思ってなかったのだろう。

しかも──

「脱がせにくい場合は、切り取ります」

私は打ち合わせ通り、ブラウスのボタンをすべて留めた。これくらいなら、目を閉じたままでできた。

AEDの筐体(きょうたい)にはハサミが入ってる。

救急隊員はそのハサミで私のブラウスの中心線をジョキジョキと切った。セーターのようにボタンがない服という想定なわけだ。
事前に知らされていたが、ハサミの金属質が肌に触れる感覚には軽く恐怖を覚えた。

さらに、再び露出したブラジャーの中心が切られた。左右のカップが開いて落ち、乳房が衆目にさらされた。

フロントホックを持っていない私には初体験となったこういう露出は、たまらなく恥ずかしかった。
もちろん、多くの視線も。

「パットはこう当てます。ケースにはイラストがありますから、その通りにします」

実際に素肌にパットを置かれたが、危険だから電気は流されなかった。

パットが外された。

「救急車が来るまで心臓マッサージです」

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