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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第3章 次男のオモテは裏…らしい


智希side

徹夜で絵を描いていると明け方にシャワーを浴びることがある。悠に見つかると『近所迷惑だ』なんて怒られてしまうけど。

だから今日もこっそり部屋を抜け出して、階段を降りた。

「鶫」

そこでオレと同じようにこっそりと、靴を履く鶫の背中を見つけて、名前を口にしてしまう。

ビクッと肩が跳ねて、ため息をつきながらこちらへ顔を向けた。

「兄さん、脅かさないでよ…心臓止まるかと思った」

「オレだって驚いたもん。こんな時間にどこ行くの」

すると鶫はバツが悪そうに、はにかんで。
口から飛び出たのは、嘘だった。

「ジョギング、早く起きすぎちゃった」

どうしてだろう。

どうして、鶫は、そして、悠は、

いつからオレに、家族に、嘘をつくようになってしまったんだろう。

「鶫」

「ん?」

"なぁに、兄さん"

甘い、いつもの声をかき消すように、しゃがんで小さくなる鶫を抱きしめた。

「ちょっと、ほんと、どうしたの」

「鶫、大人になんてならないで。ずっとオレの弟でいてよ・・・」

嘘をつく大人が大嫌いだった。
息をするように、笑って、嘘をつく。

そんな大人が大嫌いだ。

「兄さん…オレ、もういいって言われても子どもでいるよ。誰がどう思ってもずっと兄さんの弟だよ」

ぽんぽん、と優しく背中を打たれる。

結局、兄弟3人の中で1番大人なのは鶫で。

オレはただの名ばかり長男。

いつもその明るい笑顔と、声に助けられているんだ。


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