兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第13章 音がしたのは冬のはじまり
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「ばぁちゃん、オレ鶫!久しぶりでしょー?」
ここに来たのは本当に数年単位で前だからもっと色々、町ごと変わっていると思って来たのに。
「あれまぁ、鶫じゃないかい。どうしたの、お兄ちゃんや弟と喧嘩でもしたんかい、それともあの馬鹿娘とかい?」
町も家も、そして祖母の口の悪さも何も変わってはいなかった。自分の娘に向かって馬鹿娘はないでしょ。
「違うよ、ばぁちゃんに会いたかったの!」
「・・・まぁいいよ、お入り。こっちは東京と違ってこの時間にはもう寒さが降りるからね」
確かに、外はもう風が出ていて東京のビル風とは違って畑の砂を巻き込んで寒さが痛いもんな。
「ばぁちゃんオレ今日から泊まってっていい?」
「なんだい、ここまで来て帰るつもりがあったんならいいけど。あと少しで駅に行くバスは最終だよ」
「・・・泊まってくね」
この感じがまた楽になれる。祖母は孫に対しても甘いことはなく、ツンデレと言ったらそれまでだけど。それでも言葉の端々に優しさと温もりを感じられるからかな。
__玄関を抜けてすぐの居間に入ると炬燵が出ていて、足の感覚が寒さで無くなりかけていたからか上着も脱がずに入ってしまった。
「鶫、手洗ってからにしなさいよ。上っ張りも皺になる、こっち掛けるから寄越しな」
「はぁい」
祖母の家にいる記憶というのがけして多い訳では無いのにも関わらず、押し寄せて来るこの安心感は何なのだろう。
炬燵も祖母の小言も、五感で感じる全てが懐かしい。
「そんで、なんで急に来たん。ばぁちゃんにそれ話さなかったら夕飯はご飯と味噌汁だけにするからね!」
前言撤回。全然心が休まらないな、ここ。
「勘弁してよ、ばぁちゃん…」
「だってアンタこんな正月前に孫が何にも言わんで来たら吃驚するよ。それに…あの子からも連絡ないから、家族に黙って来たんじゃないん?」
ああ、やっぱりばぁちゃんには敵わないなぁ…。
それと、母さんにも。