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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第13章 音がしたのは冬のはじまり


***

お腹いっぱい食べさせて貰って、食器洗いを手伝って。やっと一息ついたばぁちゃんと2人、炬燵で向き合った。

「…それじゃあ、あの子のことからかね」

「うん、お願いします」

ばぁちゃんは言葉を選びながら、ぽつりぽつり母さんのことを話し出した。

「ことりは、小さい頃からお転婆で学校の男の子と取っ組み合いの喧嘩もするくらい勝ち気な子なのは、まぁ今のあの子を見れば分かるだろう?

何度育て方を間違ったんだろうって思ったかね。でも、あの子の行動力だけは自慢できると思ってたんだよ。急に東京行くって言い出すまでは。

大事に育てた娘がお金も当ても何も無い場所に行くって言うんだから、そりゃ反対したさ。だけども、そんなの聞く子じゃないだろ。自分がしたいことを探しに、自分のために東京行くんだって飛び出して行ったんだよ。19になる歳だった。

それから電話も手紙も何にも音沙汰無しで、どこかで野垂れ死にでもしたかと思った頃、初めて電話があった。劇団に入ったから女優になるってね。

吃驚したよ。落ち着きないあの子に、自我の塊のあの子に、演技なんて出来るのかって。素直にそう言ったら「今にテレビに出てやる!」って一方的に電話を切られた。

…ここまでがことりの話。
それでここからが、アンタの鶫の話だよ。

それから2年が経ってまた急に電話。今度こそ私が死ぬかと思ったよ、結婚もしてないのに子どもを産むって言い出した。それも相手のことは何も話せないって。

正直に言うよ、私は反対だった。まだ23にもなる前の子が1人で子どもを産んで育てるなんて出来ないから。せめて相手の人を教えて欲しかった。だけどあの子は「私の子。それ以外何もいらないでしょ」って。その時は電話は切られなかったけど、やっぱり話は聞いてくれなかった。

それから鶫が生まれて半年になる前、出てってから初めて帰ってきたんだよ。小さな鶫を連れて。その時の第一声は「お母さん、おばあちゃんになったよ」だった。不思議だねぇ、あんなに反対してたのに元気な娘と孫の顔を見たら1つも怒れなかったよ」

ここまでばぁちゃんの話にオレは相槌を打つだけで何も言葉には出来なかった。流れのまま、母さんの話を聞きたかったのかもしれない。

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