兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第13章 音がしたのは冬のはじまり
「鶫は自分の血の繋がった父親のことを考えたことはあるかい?知りたいと思うかい?」
ドキッと心臓が跳ねる。
考えたことなどない、そう言ったら嘘だ。
「…会いたいと思ったことは無いよ。母さんも話そうとしないし、オレも聞きたいと思わないし。母さんが1人で産むことを考えたってことは、そういうことじゃないの?」
思わず言葉を濁してしまった。"そういう"とはなんなのかと、問い詰められたら怖い。
「その帰ってきた時にあの子はこう言ってたよ。…父親は簡単に家庭を持てない人で、別れてから鶫がお腹にいると分かったと。別れた理由もネガティブなものじゃなくてお互いのこれからの為だったと。
それから、こうも言っていた。片親でも望まれて愛されて生まれて来たことに変わりないことをこれからめいいっぱい伝えていきたいと。
…ここからは鶫の知ってる通りだよ。鶫が3歳になって晃さんの結婚して、智希が兄さんになっただろ。それからすぐ4歳になって悠ちゃんが弟になった。そのお陰で、ばぁちゃんは3人も孫を待てた。…違うかい?」
「ち、がわない…っ」
なんで。なんでなんだろ。
「おや、泣き虫だった鶫に戻っちゃったね」
ばぁちゃん、ごめん。オレやっぱり嘘ついた。本当はちょっとだけ、自分は母さんに愛されてないかもって思ってたんだ。
本当は、意図せずできちゃったオレを堕ろせずに仕方なく産んで。それで、1人で育てるのキツくなって父さんと結婚したんだって心の奥で思ってた。
「鶫。何を泣くことがあるんだい。アンタの家族はデコボコで傍から見たら歪かもしれないけど、世界で一番あったかい、幸せを形にしたみたいな家族じゃないか」
「う"ん"…っ」
ばぁちゃんに後ろから抱きしめられて、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を手で覆った。
ばぁちゃん、ねぇ、ばぁちゃん。
オレばぁちゃんの孫で本当に良かったよ。