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僕ら二人

第1章 プロローグ

島津はジュークボックスに行き、エイミー・マンとマイケル・ペンのデュエット版『トゥ・オブ・アス』を探したけれど見つからなかった。

あるわけないか。

諦めて席に戻ると有線で聴きたいと思った曲が突然流れ出したので驚いた。

何処かで誰かがリクエストしたのかな?

ほとんど同時に同じ曲を聴きたくなった人が世界の何処かにいたと思うと何となく嬉しかった。

ちょっと訳のわからない詩にぴったりのタイミング。

まさにシンクロニシティーだ。


運ばれてきたコーヒーを一口すすって今度はピンボールマシンに向かった。

故障中という張り紙が貼ってあった。

もう何年もそのままだ。

バックグラスはフィフティーズのイラスト。

ロカビリーの若者達が1956フォードサンダーバードの前でたむろしている。

キャビネットに向かい左右のフリッパーボタンを押してみたが、片方のフリッパーが動かない。

これも昔から変わらない。


誰もいない店内を見回しながらテーブルに戻って、ゆっくりタバコを吸った。

煙が目に沁みた。


反対側のシート越しに明るく笑う同級生の桂の顔が浮かんだ。

桂は島津に気付いて軽く手を挙げた。

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