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見破られたヌードモデル

第3章 疑心暗鬼


絵が描かれていく。

全裸になると落ち着くのはヌードモデルの習性なのか。

そして余裕が戻ると、画家が私のヌードにあまり関心がないことに気づいてしまった。

私は、選ばれて望まれて、裸になったはずなのに。

本当に、私の裸が描きたかったのか、他の女性の裸でもよかったのではないか、それどころか、ヌードじゃなくて静物とか風景でもよかったのではないか──不信感が募っていく。

事務所の指示で、商品として裸にされているときには決して起きることのない感情だった。

そして、追い打ちをかけているのが、あの小説だった。

なんと、主人公はせっかく裸になったのに、裸を描いてもらえないのである。
モデル台を降りて、裸体ではなく「花瓶」がキャンバスに描かれているのを見た彼女は、怒る。

仮に私がヌードモデルでないとしても、女性としてこの怒りは実感として分かる。

裸になった女性をなんだと思ってるんだろう。

それとも巨匠なら、それもアリなのか?

それでも彼女が何日かアトリエに通い、やっと普通に見たままの裸形を描いてもらえた、という記述に至って、ようやく私もほっとしたのだった。

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