ホントノ私ハ、此処ニイル
第1章 第1話
私は金庫室の扉の前に立ち、加賀美くんに声をかけた。
「加賀美くん、ここなの?」
「あ、次長……」
ふふ、緊張と心細さから解放された柔らかい声。
“やっとかまってもらえる”というような可愛らしい顔をしているんだろうね。
彼女も私のしつけに、きっといい声で鳴いてくれるに違いない。
「あ、ちょっと待ってて。何か鍵のところにひっかかってるみたいだから」
「はい……」
その声は、まるでお仕置きを焦らされているような切なげな返事に聞こえる。
縛り上げたまま私の足元にひざまずかせたくなるよ。