ホントノ私ハ、此処ニイル
第2章 第2話
精肉部門では牛刀といわれる、刃渡り30センチあまりもある大きな包丁が使われています。
一塊10キロ以上もある肉を商品にするために、余分な脂を取り除いたり細かい部位に分けたりする「成形」が行われるのですが、その作業がなんとも艶っぽく見えてくるのです。
作業に入る前、牛刀とシャープナーをすり合わせるその金属音が悦楽の時間の始まりを知らせてくれます。
肉に刃先を滑らせて脂や薄皮を取る動きは、ゆっくり全身を愛撫しながら下着を剥ぎ取るようにも見え、ソテー用に均等の厚さにカットしていく動きの落ち着いたリズムは、女の身体を突いてくるそれとよく似ているのです。