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ホントノ私ハ、此処ニイル

第1章 第1話   


「すみません、こんな時に」

「いやいや、気にすることはないよ。それよりどこにいったかなぁ」

 私はそう言いながら、斜め前のデスクに座る加賀見くんの背後に立った。

「このあたりは探してみたんですが、全然。今日は外出てないんですけどね」

「うーん、じゃ、他の証書に紛れたとか?」


 自分のデスクの上をパタパタと物を動かしながら証書を探す加賀美くん。

 彼女のセミロングのつややかな髪の毛は、仕事の間はひとつに束ねられ、軽やかで小ぶりなカールを描いている。

 見た目は全く派手さのない、地味な感じの女性だが、清潔感があってとても好ましい。

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