
ホントノ私ハ、此処ニイル
第3章 第3話
そして、今、寝室に入った僕は、手に持っていたロープとペットボトルを足元に無造作に落とし、ほの暗い明かりをつけると、後ろをついてきた妻が部屋に入ったことを確認してドアを閉めた。
ドアのすぐ横には、妻のコートとスカーフ……
今日はこれにしようか。
ドアを閉め終わると同時に、僕は妻の背後に回り、左手で妻の両まぶたを覆うと、右手でスカーフを掴んだ。
妻のうなじから香る匂いは、僕を臨界へと誘う。
「目、開けちゃダメだよ」
耳元で囁かれた妻は、少し上を見るように顎をあげ、自分の意志で目をつむったまま大きくひとつ息をした。
僕は、スカーフで妻に目隠しをする。
これが、始まりの合図だよ、みゆき……
