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ホントノ私ハ、此処ニイル

第3章 第3話


 でもあの日、あれから貪るように妻を抱いた僕は、妻の体温が僕と同じくらい熱くなっていることを知った。


 別人かと思ってしまうほど、
 あげる声は大きく、
 僕を抱きしめる力は強く、
 僕のを求める瞳は艶やかだった。


 それを見た僕も、どうやらいつも通りの優しいだけの男ではいられなかった。

――虐めたい

 僕の中から、別の僕がそう言った。


 これが、僕が初めて迎える臨界だったんだ。



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