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ホントノ私ハ、此処ニイル

第3章 第3話


 僕は、瞼の上のスカーフ以外、なにも纏わずに立つ妻の前にひざまづき、その小さな体を抱きしめた。

 10秒足らずのこの時間。

 ちょうど、僕の耳元に妻の鼓動がよく聞こえて、この上ない安心感があるんだ。


 ほんのわずかな時間の安らぎを得た僕は、おもむろに床に落としていたロープを手にとる。

 10メートル近くあるだろうか……

 妻の体に時折唇を当てながら、ロープの真ん中にゆるいわっかをつくると、それを妻の首にそっと通すのだ。

 滑らかな白い肌にゴツゴツした紅紫のロープの結び目、そのアンバランスが堪らなく愛しい。

 僕は微かに震える妻を立たせたまま、ロープをその体に編み込むように巻き付けていく。

 ああ、もう、ため息しかでてこないよ……


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