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ホントノ私ハ、此処ニイル

第1章 第1話   


 私はひとり金庫室内の監視カメラの映像が見られる場所へと移り、加賀見くんの様子を伺った。

 画像の粗い小さな四角の中で動く女のかげ。

 予想通り、空間ごとの緊縛に彼女は怯えたような表情を見せている。


 私はこれが見たかったのだ。

 出してくれと騒ぎ立てるでもないが、内心は不安でたまらない……そんな表情。

 自分だけではどうにも逃れられない状況に陥った女の顔が私は好きだ。



 “通話”の時間は長くて4、5分ってところだろう。

 その時間だけ楽しめる貴重な映像を眺めながら、私は思う。


 彼女の本当の姿を見てみたい、と。



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