ホントノ私ハ、此処ニイル
第1章 第1話
7年前、今とは違う支店にいた頃、私はとあるバーでひとりの美しい女性と出会った。
話をするうちに酒が進み、その女性がつぶれかけてしまったのだが、その女性を家まで送り届けたその時、彼女は私の耳元でこう囁いた。
「私をしつけてもらえませんか?」
その時の私は、まだ意味がわからなかった。
しかし彼女は短い私との会話から、私の中に埋もれていたS性を見抜いていたという。
見た目は穏やか、一切の攻撃性を醸しだすことなく、終始周りへの気遣いを怠らない……
M性をもつ彼女の嗅覚は、初対面である私のこんな一面から、S性が隠れていることを嗅ぎ付けたというのだ。