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ヌードモデルとアンドロメダ伝説

第2章 アンドロメダを裸にする

「モデルさんて、そんなことまで調べてから仕事するものなのですか?」

約束の日、依頼主の川村さんの部屋にて。

川村さんは公立高校の世界史の教師。38歳の既婚男性。

日曜画家ということになるが、狭いながらも本格的なアトリエだった。

面白がる川村さんの疑問に、事務所の岩田さんや図書館の本から得た知識で答えると、彼は満足そうに笑った。

その辺の話は描きながらするとして、
と川村さんは言い、
さっそくポージングとなった。


意外かもしれないけど、着衣画のモデルだって裸からスタートしたりする。

構想通りの衣装とポーズから描き始める画家が大多数だが、
まず裸婦モデルで見たままのエスキース(試作画)を完成させてから、着衣を描いて完全な作品に仕上げるという画家も珍しくない。(エスキースが気に入ると方針変更して裸体画として完成させる場合もあるとか)

川村さんのスキルは知らないが、
手を縛られた女性──特殊な形はヌードでないと把握しにくいのだろう。

私が別室で服を脱いでいる間に、大きな板を川村さんがアトリエに運びこんできて、看板のように壁に立てていたらしい。それを岩場に見立てるのだ。

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