始まりは冬の夜から
第1章 Act.1
「あんなのは全然気にしていない。藤森が俺をどう思ってるかなんて、とっくの昔から気付いてたしな。というか、嫌われてない方がむしろおかしいぐらいだ」
「――すいません……」
「だから謝らなくていい」
椎名課長は小さく溜め息を漏らしてから、私の前にビニール袋を差し出してきた。
「あの、これは……?」
不思議に思いながら私は訊ねる。
椎名課長は何も言わず、半ば強引に私にそれを押し付けた。
さすがに少し躊躇ったものの、結局は素直にそれを受け取った。
「これだけ寒い中で仕事してたんだ。相当身体が冷えてるはずだと思ってな」
椎名課長が言っている側で袋の中を物色してみたら、中から缶コーヒーが二缶、中華まんが全部で四個出てきた。
「食え」
いきなり言われ、私は中華まん入りの紙袋を手に取ったままで止まってしまった。
ポカンとして椎名課長を凝視すると、課長はなおも、「食えと言っている」とさらに命令してくる。
「はあ……。では遠慮なく……」
私は椎名課長に向けて軽く会釈してから、紙袋から中華まんをひとつ手に取った。
ちょうど中心に捻りを入れたような模様があったから、中身は肉まんかな。
そう思いながら、下に貼り付いていた紙を半分剥がし、齧ってみたら、甘じょっぱい餡の味が口いっぱいに広がった。
「美味いか?」
「はい」
「少しはこれであったまったか?」
「はい」
いちいち確認してくる椎名課長がちょっとおかしい。
肉まんを咀嚼しながらクスクス笑うと、怪訝そうにされてしまった。
「――すいません……」
「だから謝らなくていい」
椎名課長は小さく溜め息を漏らしてから、私の前にビニール袋を差し出してきた。
「あの、これは……?」
不思議に思いながら私は訊ねる。
椎名課長は何も言わず、半ば強引に私にそれを押し付けた。
さすがに少し躊躇ったものの、結局は素直にそれを受け取った。
「これだけ寒い中で仕事してたんだ。相当身体が冷えてるはずだと思ってな」
椎名課長が言っている側で袋の中を物色してみたら、中から缶コーヒーが二缶、中華まんが全部で四個出てきた。
「食え」
いきなり言われ、私は中華まん入りの紙袋を手に取ったままで止まってしまった。
ポカンとして椎名課長を凝視すると、課長はなおも、「食えと言っている」とさらに命令してくる。
「はあ……。では遠慮なく……」
私は椎名課長に向けて軽く会釈してから、紙袋から中華まんをひとつ手に取った。
ちょうど中心に捻りを入れたような模様があったから、中身は肉まんかな。
そう思いながら、下に貼り付いていた紙を半分剥がし、齧ってみたら、甘じょっぱい餡の味が口いっぱいに広がった。
「美味いか?」
「はい」
「少しはこれであったまったか?」
「はい」
いちいち確認してくる椎名課長がちょっとおかしい。
肉まんを咀嚼しながらクスクス笑うと、怪訝そうにされてしまった。