
始まりは冬の夜から
第1章 Act.1
「あの……、椎名課長……?」
恐る恐る口を開いた私に、椎名課長が真っ直ぐな視線を注いでくる。
「藤森、お前は俺に嫌われると思ってたか?」
「あの……」
「答えろ」
詰め寄られても、素直に、「はい」なんて答えられはずがない。
かと言って、否定しても、それはそれで嘘吐き呼ばわりされそうな気がする。
そもそもさっき、「課長に一泡吹かせてやる!」と叫んだのを聴かれてしまっているのだ。
叶うならば、仕事を投げ出してでも逃げ出したかった。
でも、今は私の左腕が椎名課長に捕らわれ、自由を失っている。
振り払おうにも、女の私が男性の力に敵うはずもない。
と、椎名課長の手の力が緩んだ。
「――すまない……」
掠れた声で、私に謝罪してきた。
解放されたのに、私は逃げるのも忘れ、ぼんやりと椎名課長を見つめた。
椎名課長は眉根を寄せながら微苦笑を浮かべている。
「これじゃあ嫌われて当然だ。俺は本気になった女に対してどうしても素直に振る舞えない。それでいて、自分で呆れるほど独占欲が強い。他の男と親しげにしているのを見ているだけでイライラするんだからな……」
椎名課長はそこまで言うと、肉まんを持ったままの私の右手を、椎名課長の両手でそっと包み込んできた。
恐る恐る口を開いた私に、椎名課長が真っ直ぐな視線を注いでくる。
「藤森、お前は俺に嫌われると思ってたか?」
「あの……」
「答えろ」
詰め寄られても、素直に、「はい」なんて答えられはずがない。
かと言って、否定しても、それはそれで嘘吐き呼ばわりされそうな気がする。
そもそもさっき、「課長に一泡吹かせてやる!」と叫んだのを聴かれてしまっているのだ。
叶うならば、仕事を投げ出してでも逃げ出したかった。
でも、今は私の左腕が椎名課長に捕らわれ、自由を失っている。
振り払おうにも、女の私が男性の力に敵うはずもない。
と、椎名課長の手の力が緩んだ。
「――すまない……」
掠れた声で、私に謝罪してきた。
解放されたのに、私は逃げるのも忘れ、ぼんやりと椎名課長を見つめた。
椎名課長は眉根を寄せながら微苦笑を浮かべている。
「これじゃあ嫌われて当然だ。俺は本気になった女に対してどうしても素直に振る舞えない。それでいて、自分で呆れるほど独占欲が強い。他の男と親しげにしているのを見ているだけでイライラするんだからな……」
椎名課長はそこまで言うと、肉まんを持ったままの私の右手を、椎名課長の両手でそっと包み込んできた。
