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Melting Sweet

第4章 Act.4

 そんな私に、杉本君は微苦笑を浮かべながら肩を竦めて見せる。

「唐沢さんをひとりにするわけにいかないですから」

「――どうして?」

「体調、良くないでしょ? 途中で倒れたりしたら大変じゃないですか」

 私は瞠目したままポカンと口を開けてしまった。
 もしかして、具合悪いとずっと誤解していたのか。
 でも、本気で体調不良なら料理はほとんど食べないし、アルコールなんていっさい口にしない。
 誰が見ても、私がピンシャンしているのは明確だったはずだ。

「――私、この通り元気だけど?」

 私は右腕でガッツポーズを作り、左手で二の腕を軽く叩く。

 杉本君はその様子をまじまじと見つめながら、「ほんと、ですか?」と訊ねてくる。

「ほんとです」

 今度は私が苦笑いする番だった。

「だいたい私がそんなか弱く見える? 自慢じゃないけど、風邪だって滅多に引かないのよ? どんなに飲んでも二日酔いとは全く無縁だし」

「そうですか? 俺からするとだいぶ無理してるように見えたんですけど」

「無理? そんなの全然してないわよ。むしろ今は、自分らしく毎日を過ごしてるから楽してるぐらいよ。家事が出来ないのを責める相手もいないしね。ひとりで自由気ままに出来るのが一番幸せよ」

 いつになく、私はよく喋っている。
 そうそう酔っ払うなんてことはないのに、やっぱりトシのせいで回りが早くなってきたのか。

 一方で、杉本君は笑顔を引っ込め、私を神妙な面持ちで見ている。
 もしかしたら、今の私にドン引きしてしまったのだろうか。
 でも、それならそれでも構わない。

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