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Melting Sweet

第4章 Act.4

 ところが、私の思いとは裏腹に、杉本君は予想外のことを口にしてきた。

「唐沢さん、体調は特に悪くないんですね?」

「だからさっきから言ってるじゃない」

「なら、これから俺に付き合ってくれませんか?」

 あまりにサラリと言われ、理解するまでに少しばかり時間を要した。
 けれども、言葉の意味が分かったとたん、またしても、口をあんぐりと開けたまま呆然としてしまった。

「――ねえ、今、『付き合って』って私に言った……?」

 念を押すように訊ねると、杉本君は、「ええ、言いましたよ」と涼しい顔で答える。

「実はまだ飲み足りないですから。ひとり酒も嫌いじゃないですけど、せっかくですから唐沢さんとふたりで飲み直したいな、って」

「――私と、ふたりで……?」

「さっきはゆっくり話せなかったですから」

「――本気なの……?」

「年上の女性をからかうほど器用じゃありませんよ、俺は」

 杉本君は困ったように笑みながら、「どうです?」とさらに訊いてくる。

 私は考えた。
 速攻で断る選択もあったはずなのに、何故か出来なかった。

「そんなに悩まないで下さい」

 よほど私が険しい表情をしていたのだろうか。
 杉本君が優しく微笑みかけてくる。

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