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Melting Sweet

第5章 Act.5

 杉本君はきっと呆れている。
 男にだらしなかった過去の私に幻滅して、これからは距離を置く。
 そして、私とは比べものにならないほど素敵な子と素敵な恋愛をするだろう。
 私の中で、そう結論付けた。

 ところが――杉本君は私の予想を見事に覆す行動に出た。

 嗚咽を漏らし続ける私を杉本君の元へと引き寄せ、そのまま強く抱き締めてきた。

「そんなに自分を貶めないで」

 杉本君が私に囁く。

「完璧な人間なんてどこにもいません。俺だって、表面上ではいい顔をしているかもしれませんが、これで好き嫌いがはっきりしているんです。――俺は、付き合ったことのある女に、『思いやりがない』、『考えてることが分からない』って散々言われ続けました。当然ですね。だって、告白されて何となく付き合ったようなものでしたから」

 杉本君は抱き締める腕の力をわずかに緩めた。
 そして、私の顔を覗き込むと、微かな笑みを向け、親指で涙を拭ってくれた。

「俺はガキだったから、女と寝られたらそれでいい、って思ってたんです。言ってしまえば、性欲を満たす道具程度にしか考えてなかったってことです。
 さっきは唐沢さんに偉そうなことを言いましたけど、俺の方がよっぽど最低ですよ。唐沢さんは少なからず、相手の男に恋愛感情は持っていたわけでしょ? でも俺の場合、恋愛感情なんてなくても……、女なら誰でも抱けたんですよ……」

 私は目を瞠った。
 杉本君の言葉はとても信じられない。
 けれども、彼の目を見る限り、冗談を言っているようにも思えない。

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