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Melting Sweet

第5章 Act.5

「――唐沢さん」

 しばしの沈黙のあと、杉本君が重い口を開いた。

「もしかして、自棄になってませんか? 俺が、変な話をしてしまったから……」

 痛いところを衝かれた気がした。
 職場では仕事をバリバリこなし、プライベートでは男達を潰すほどの、自他共に認める酒豪。
 けれども本当は、誰かに依存したくて仕方ない甘えたがり。

 結局、私も――いや、私こそ杉本君を利用しようとしている。
 杉本君が私に想いを寄せていてくれていたことをいいことに、私の中にぽっかりと空いた隙間を埋めてもらおうとしている。

「――自棄になってない、とは言いきれない……」

 私は素直な気持ちを吐露した。

「でも、杉本君に抱かれたいと思ったのも嘘じゃない。恋してるかどうかは別にして……、今はただ、杉本君と……」

 言いかけた言葉は、杉本君の口付けによって封じられた。
 最初は唇同士が重ねられているだけだったけれど、しだいに深さを増し、割れ目から舌を絡ませてくる。

 静まり返った室内に、唾液を吸い上げる音がやけに煩く響き渡る。
 頭の中もぼんやりとしてくる。
 飲み続けていたお酒のせい、というよりも、杉本君のキスに私は完全に酔っている。

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