
お稲荷こんこん
第5章 新たなこと
朝ご飯の後に、卓袱台に原稿を広げて諭吉がチェックしている。
「はい、完了っす。お坊さん来るのは午後すか? それまで居ましょうか?」
「大丈夫よ。あんたの有休、随分と使わせてしまったからね。ほんと、感謝してるのよ」
「先輩、そんなに言われると…何だか後が怖いっす…」
「何だ怖いって。人の感謝は素直に受けなさいよ、全く…」
そう、その調子。
諭吉は笑って荷物を整えると立ち上がった。
車に乗り込むと窓から顔を出して。
「また何かあったら連絡を。あ、今夜は合コンなんで返信出来なくても許してねん…」
許してねんて…。お狐様のご利益を無駄にするなと告げて、車を見送った私。
午後にはお坊さんが来て、裏の墓地に納骨をする。
それが終われば、一息つく。
掃除用具を取り出すと、家の周りから墓地に向かう道を綺麗に掃き整えた。雑草を取りながら、咲いてる花を摘んだ。
それからお堂に向かい、いつものお務めをして奥の間に入った。
正座してお狐様の絵を眺めると、声を出して話しかける…。
お狐様…。
ばあちゃんの願いを叶えてやれって言ったよね…
私、あれからずっと考えて考えて…
やっと決めたから。
だから、見守っててね。
午後になって、お坊さんが来て納骨を済ませると私は役場に向かった。
大下のおっちゃんに納骨の報告をするのと、必要な手続きを済ませに。
「いやあ、りんちゃん。ご苦労さんだったなあ。これでばあちゃんも喜んでるよ。」
「おっちゃんにはお世話になりっぱなしで。ほんとに助かったよ。ありがとう…」
おっちゃんは、だはは…と豪快に笑った。
さて、ここからが本番…とばかりに私は真顔で切り出す。
「あのね。私、ずっと考えてね…決めたの。村に戻って来ようと思ってるんだ。」
「戻るってえのは…こっちに住むって事かいな?」
「そう。ずっとここに…。ばあちゃんみたいにね。」
ばあちゃんは私に、お狐様を守ってくれと願った。
それは、離れていても忘れずにいてくれという意味だったのかもしれない。
でも、心の中では戻って欲しいと思っていたと…私は思ってる。
それを口にしないのが、ばあちゃん…。
稲荷堂の守り人として村に住む。
それが、私が考え決めた事だ。
「はい、完了っす。お坊さん来るのは午後すか? それまで居ましょうか?」
「大丈夫よ。あんたの有休、随分と使わせてしまったからね。ほんと、感謝してるのよ」
「先輩、そんなに言われると…何だか後が怖いっす…」
「何だ怖いって。人の感謝は素直に受けなさいよ、全く…」
そう、その調子。
諭吉は笑って荷物を整えると立ち上がった。
車に乗り込むと窓から顔を出して。
「また何かあったら連絡を。あ、今夜は合コンなんで返信出来なくても許してねん…」
許してねんて…。お狐様のご利益を無駄にするなと告げて、車を見送った私。
午後にはお坊さんが来て、裏の墓地に納骨をする。
それが終われば、一息つく。
掃除用具を取り出すと、家の周りから墓地に向かう道を綺麗に掃き整えた。雑草を取りながら、咲いてる花を摘んだ。
それからお堂に向かい、いつものお務めをして奥の間に入った。
正座してお狐様の絵を眺めると、声を出して話しかける…。
お狐様…。
ばあちゃんの願いを叶えてやれって言ったよね…
私、あれからずっと考えて考えて…
やっと決めたから。
だから、見守っててね。
午後になって、お坊さんが来て納骨を済ませると私は役場に向かった。
大下のおっちゃんに納骨の報告をするのと、必要な手続きを済ませに。
「いやあ、りんちゃん。ご苦労さんだったなあ。これでばあちゃんも喜んでるよ。」
「おっちゃんにはお世話になりっぱなしで。ほんとに助かったよ。ありがとう…」
おっちゃんは、だはは…と豪快に笑った。
さて、ここからが本番…とばかりに私は真顔で切り出す。
「あのね。私、ずっと考えてね…決めたの。村に戻って来ようと思ってるんだ。」
「戻るってえのは…こっちに住むって事かいな?」
「そう。ずっとここに…。ばあちゃんみたいにね。」
ばあちゃんは私に、お狐様を守ってくれと願った。
それは、離れていても忘れずにいてくれという意味だったのかもしれない。
でも、心の中では戻って欲しいと思っていたと…私は思ってる。
それを口にしないのが、ばあちゃん…。
稲荷堂の守り人として村に住む。
それが、私が考え決めた事だ。
