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その瞳にうつりたくて…

第5章 思い出

こんなに思われて嬉しくない男はいない。
ただ、この状況は非常に不味い!!

「あ、でも、ほら…、あれだよ、あれ!」

焦って声が裏返る。
とりあえず、話題を変えなきゃ。
このままじゃ俺の精神が保たない。
嬉しさと罪悪感と気まずさと恥ずかしさ。
全部がごちゃ混ぜになって頭がパンクしそうだ。

「はい?」
「それって、4歳の頃の話でしょ?そ、そんな昔の初恋や恋心なんて…、大人になるにつれて薄れて行くって言うか…」

俺は彼女にそこまで思ってもらえる男じゃない。
夢半ばにして挫折して、それでも夢を諦めきれず未練たらしく芝居にしがみつき、ここで指導員をしてる。
挙げ句に、彼女の目が悪いのをいいことに彼女を騙してる。
俺は、そこまで想ってもらえるような男じゃない。
ただの情けない男だ。

「確かに…、4歳なんてあまりにも子供過ぎますよね。物心も付いてるかどうかの年齢ですしね」
「だろ?そんな…、初恋なんて呼ぶには大袈裟過ぎだって…」


「でも、物心が付いたかどうかもわからない私の心に思い切り焼き付いちゃったんですもん!!」





「―――――っ!?」


その瞳があまりにも真っ直ぐで
力強く宣言した彼女に、俺は何も言えなくなってしまった。

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