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その瞳にうつりたくて…

第5章 思い出

「でも、私の話を笑わないで聞いてくれてありがとうございます」
「え?何で笑うの?」
「だって、初恋が特撮ヒーローで未だにその初恋を引きずってるって言ったらいつも笑われちゃうんです。お陰で今も独り身です」

あぁ、確かに俺も最初は変わった子だなって思ったけど。

でも、彼女は今でも俺の思い出を大事にしてくれている。
なのに俺は、こんないい子を騙してるんだよな。
俺と彼女は友達になったわけだし、いつかはちゃんと打ち明けないといけねぇんだよな。
でも、俺の正体を打ち明けた時の彼女の反応が怖い。

もしガッカリされたら?
歳を取った俺を見てガッカリされたら?
それに、俺が彼女を騙してたとわかれば余計に彼女を傷つけてしまう。

いつか…
いつかは、彼女にちゃんと打ち明けないと…。
このまま彼女と友達にいるためには…。

彼女の横顔を見ながら俺はぼんやりとその事を考えていた。
今の俺の一番の問題だ。

すると

「あ、ねぇハルさん。ハルさんって何の香水使ってるんですか?」
「え?こ、香水…?」

い、いきなり何だよ?
香水なんて俺は使ってない。
香水に興味なんてないし、使ったこともない。

「香水なんか付けてないよ」

もう香水をつけて着飾る年齢でもないし。

「さっき、雷に驚いてハルさんにしがみついた時、すごくいい香りがしたから」

い、いい香り?
何のことだろ?
俺は昔から香水の類いには疎かったし、ここ最近でそんなものを使った記憶はない。

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