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その瞳にうつりたくて…

第5章 思い出

「さぁ、何の香りかなぁ」

もしかして、レッスン中に生徒の香水が移ったのか?
それ以外考えられねぇな。
汗臭くなかっただけマシかな。

と、思った瞬間

「――――えぇっ!?ちょっ…」
「うん、この香り。いい匂い」

彼女が再び俺に近づき俺の胸に顔を埋めて来た。
いや、いやいや…、何だよこの体制は!
パイプ椅子に座る俺の胸元に、少し体制を低くして、手探りで俺の胸元を探りながら顔を近づけて来た。

ど、どうしよう…。
相手は女の子だし、力任せに振り解くわけには行かないよなぁ…。
いや、でもこの体制は…っ!

「凄く爽やかでミントみたいな香り」
「あ、あぁ、だとしたら柔軟剤じゃないかな…」

確かうちで使ってる柔軟剤がそんな香りだったな。
フレッシュミントとかそういう系の。

「初めて私を支えてくれた時もこの香りがしましたよ」

あぁ、彼女が俺の倒したほうきにつまづいて転びそうになったあの時か。

つーか、もしかしてこの子って天然…?
天然で素でこれなのか?
これ、普通の男なら即アウトだろ…。

「や、やっぱり香水じゃなかっただろ?俺、香水とか苦手だから!」

パイプ椅子から立ち上がり彼女から体制を反らした。
いつまでもこんな格好してられるかよっ!!

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