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その瞳にうつりたくて…

第5章 思い出

「最近の柔軟剤って香水並みにいい香りですね」
「そ、そうだね…」

わざと?
わざとな訳じゃなさそうだよな。
っていうか、わざとじゃないならマジで困る。

もう…、彼女の行動ひとつひとつが俺を焦らせる。
この子の顔がまともに見れなくなってしまう…。

パイプ椅子から立ち上がった俺は反射的に彼女に背中を向けてしまった。
さっきまで見れてた彼女の顔がまともに見れない。

どうしたんだよ、俺は。

「あ、ところでハルさん、時間はいいんですか?」
「え?時間?」

俺はそれを言われてハッとした。
慌てて腕時計を見ると休憩時間はとうに終わっていた。

「あっ、やっべ!!」
「そろそろ休憩時間も終わりですよね」

やべー、マジでやべー!
もうこんな時間じゃねぇか!
彼女といると時間が経つのが凄く早く感じる。
特に今日は彼女に会いに来るのが遅くなったから余計に早く感じる。

「つーか、よくわかったね。休憩時間が終わるって」

彼女は目が悪いから時計は見えてないはず。
彼女自身、腕時計もしてないしここには時計だってないのに。

「目が悪いぶん他の感覚が鋭くなったみたいです。時間の感覚とか、さっきみたいに嗅覚とかが」

へぇ。
前にテレビでそういう特殊能力を持った人を見たことはあるけど。
彼女は絶対音感もあるし、他の人に比べたら感覚が冴えてるのかもな。

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