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ヌードモデルは『ミス・キャンバス』になれるのか

第3章 知佳の場合――レオタードの憧憬

全裸の激しい準備運動(?)を終えると、知佳はガウンを着てたっぷり休憩をとった。
やがて定刻になると私に付き添われて隣のゼミ室に入った。

男女のゼミ生は、惜しげもなく晒された知佳の裸身に息を呑んだ。
美しすぎるのだから仕方がない。

アピールするための最高のポーズを見つけるためには、実際に動いてみるのが一番だった。

知佳自身が選んだレッスン用のピアノ曲がかけられ、
バーこそないが十分な空間のあるゼミ室で、知佳は普段のレッスン通りに動いた。

ポアントだかなんだか知らないが、基本の動作を訓練するための曲だから「舞う」ではなく「動く」と表現するしかないが、

それは、見ている方に精神力を要求される過激な人体表現だった。

乳房は乳房だ。お尻はお尻だ。性器は性器だ。

それらが、揺れる。回る。開く。

ここにいるのは羞恥心のある人間なの?
プログラムされたアンドロイドじゃないの?

そんな錯覚さえ抱いてしまう。

負けたな。

セミプロのヌードモデルは現役バレリーナに負けました。

モデル台の上の私は、一糸まとわぬ姿は平気でも、脚を開くとなると、
(あん、見えちゃう……しかたない、不可抗力不可抗力)
なんて克服しながら敢行しているというのに──

控え室でやったのは準備運動に過ぎなかったということが、性器(何回も書くな)が見える頻度の違いだけでわかってしまう。

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