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第3章 小麦の滴

男が僕に気付いた。
「なんだぁ?この野郎!見せもんじゃねぇぞ?!」
いきりたって、僕の目の前まで詰め寄ってくる。

ー酒臭い…

怖いという感情はなかったが、嫌悪感は感じていた。
そんな僕の気持ちが表情に出ていたのかもしれない。
「なんとか言えよ、こら!」
男は僕にからんでくる。

「ちょっと、やめてあげてよ!この人は関係ないでしょ!」
真琴さんが男にすがりついて止めてくれる。

「んだ、このアマ!あ、ひょっとして、こいつがお前のオトコだな?」
男は真琴さんを振りほどこうとする。

「何言ってるのよ!関係ないっていってるでしょ!」
「うるせえ!この淫乱女が!」
男が興奮して手を振り上げ、真琴さんが身をかがめた。

ーこのままでは真琴さんが叩かれる…!

僕はとっさに、男が振り上げた腕をつかんだ。
「やめろ!」




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