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第3章 小麦の滴

「何しやがる!」
男が振りほどこうとして、僕を突き飛ばした。
僕はふいをつかれてよろめく。

「関係ないなら邪魔するんじゃねえよ!」
そう言い捨てると、男はまじまじと僕の顔を見た。
「…やめてください」
僕はなるべく、冷静な口調で男に言った。

「お、なんだ。お前はブン屋の兄ちゃんか!」
僕のことを無視して男が言い放つ。
「てめえは、夫婦のことに首つっこんでんじゃねぇよ!」
男の言うことも一理ある。
でも、僕はなにより真琴さんが心配だった。
このまま引き下がっては、この後で、真琴さんがこの男にひどい目に合わされる。
これまでも、これからも。
「暴力は、やめてください!」

このとき、僕は自分の考えは正しいと思って疑わなかった。


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