テキストサイズ

堅実メイドの献身

第4章 辞退

雅の問いを聞きながら、暎人は顔を洗う。

「そうだね。雅が慣れてきたら、内の会社の方にも入ってもらうから、そのつもりでいて。」

「会社にもですか?一部、秘書の仕事も担うとは聞いておりましたが、会社にまで同行するとは思っておりませんでした。」

タオルで顔を拭きながら暎人は言った。

「そうなんだ。詳細はまた連絡するから、それまでは待つように。」

「かしこまりました。」

ー 暎人様は会社ではまだ秘書をつけるようなお役職ではないはず、、どういうこと?

色々と疑問はあるが、連絡を待てと言われたからにはあれこれ聞くべきではない。

「それから、今夜のことだけど?」

すっと伸びた手が、雅の横を過ぎ去り、後ろの壁で止まる。更に雅の足の間に暎人の右足が割って入ってきた。
一気に距離が縮まり、身体がところどころ触れ合う。

「そのことなんですが、せっかくの申し出を大変申し訳ございませんが、謹んで辞退させて頂きます。」

暎人が喋るのを遮ってゆっくり丁寧に、しかしはっきりと断る。
雅なりに誠意を持って断ったつもりだ。

じっと見つめられる。そんなに見られると、目力に負けてしまいそうだ。

「どうして?」

空いてる方の手が、雅の頬を包む。
ずいっと顔を寄せてきて、ますます近くで見つめられる。

「困ってしまいます。私はただの使用人です。仕事として、お付きのメイドを任されました。暎人様と、その、、このように密接にして良い立場ではありません。それに、仕事があるのにこの様なことをしてしまって、、真面目に働いてる方に申し訳ないです。」

言葉を慎重に選んで伝える。
こちらが、嫌いだとか、セクハラだとか言うと返って機嫌を悪くさせるかも知れない。

「なるほど、、、。まさに正論だ。」

納得してくれたのか、雅を抑える力が緩む。

「ご理解頂きありがとうございます。」

「君のことはできる限り理解したいと思ってる。」

また真っ直ぐ見つめられる。
そんなに見られるとかえって居心地が悪い。

「でしたら、離して頂いてもよろしいでしょうか?」




ストーリーメニュー

TOPTOPへ