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堅実メイドの献身

第6章 そもそもメイドなるものは

「昨夜はその誘いに乗っかってとんでもない目にあいましたが、」

ー 昨日はその優しい雰囲気につい乗せられちゃったけどもう騙されないんだから。

「ははっ、そう言えば。」

暎人はもう一口飲むと、ほっと息を突いてソファに持たれた。目を閉じてくつろいでいる様に見える。

ー そう、今朝も昨日もこんな感じでさ、ガツガツしてないのよ、このお方は。だからこそ余計に危険なんだわ。

「おかわり。」

「えっ。」

「もう一杯いただけるかな?」

そう言って手に持ったカップを雅に突き出す。

ー これを取りに行くのは危険。

かと言って無視するわけにもいかない。
しばし固まって葛藤していると

「わかった、じゃあ僕が淹れるよ。」

そう言って立ち上がろうとした。

「すみません。私がやりますから。そのままお座りになっていてください。」

立ち上がろうとする暎人を制止して、カップを受け取る。
ここは使用人としての責務が勝った。予想に反して暎人は何もしてこない。少し安心する。

落ち着いて茶葉を取り替え、2杯目のお湯をポットに注ぐ。
雅も喋らなければ、暎人も特に喋ることなくストレッチなどして体をほぐす。しばしの沈黙が続く。

「あの、暎人様。」

「うん?なにかな?」

「あの、昨夜や今朝の様なことは、これきりにしていただきたいのです。」

ポットの中で揺らめく茶葉を凝視したままはっきりを言う。

「暎人様のお付きメイドを今後も続けさせていただく為にも、何卒ご理解していただけないでしょうか?」

「んー、どうしようかねぇ。」

暎人からは、なんとも煮え切らない返事がきた。
2杯目のハーブティーをお出しする。それと一緒に一枚の紙を暎人に渡す。

「では、こちらを今一度お読みください。」

「なんだいこれ、、、えーと、メイドとは、清掃、洗濯、炊事などの家庭内での労働を行う女性の使用人を指す。」

「これが、メイドの定義です。」

「調べてきたの?」

「はい。暎人様にそもそもメイドとは何たるかをご理解頂くために。その下にはメイドの役割、歴史などもまとめさせていただいております。」

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